No.01「舟日」

舟が、白い石の海の上を、前方の磨かれた黒い石の壁のわずかな隙間に向かって、静かに航行しています。その舟の前部には、緑の植物のような、赤い花のようにも見える不思議な柱が立ち、風にそよいでいる。


この作品は、埼玉県立近代美術館館長の田中幸人氏の企画・監修によるものです。田中氏は病院の庭の設計を依頼されたことで、人生の困惑(病気や他の障害)を抱えた人が、この病院による癒しによって解放されることを、黒い石の壁と白い石の海、そこへ漕ぎ出す舟の形に象徴したのです。黒い石の壁は人生の困惑を、そのわずかな光の見える隙間は希望と未来、そして漕ぎ出す舟は人や人生、その上に立つ植物のような形は、生命の象徴と言えるでしょう。単一の作品ではなく、庭全体で意味を持つ作品となっています。


作品解説:
彫刻家望月 菊麿